2025 年 5 月 31 日
マイワイフ・イズ・アドミラル ― 加山雄三氏の言葉・人生の経典
「I am captain, but My wife is admiral」(私は船長である。が、私の妻は提督である)
私は加山雄三氏からこの言葉を何度か聞いた。アメリカの諺だそうだが、コンサートやライブでの発言であるから“妻には勝てない”くらいのジョークだと当時は受け止めていた。
しかしながら結婚40年、古稀を迎えようとする齢になって、この言葉の意味が沁みつつある昨今である。偶然に知り合った私と人生をともにしてくれた妻については感謝しかないことにあらためて気づく。30歳代で起業して生活が不安な時期もあった。生活の諸々も多々独断で行った。これまでの(今でも?)私のわがままを許してくれたからこそ今がある。この先あと何年生きるか分からないが、妻を敬いながら生きていくことへの意識が“アドミラル”という言葉に集約されているのではないか。
一方、最近は妻の小言も多くなった気がする。何かというと気に入らない風なネガティブ発言が飛び出す。スーパーで野菜を買って帰ると「新鮮ではない」と指摘される。なるべく新鮮なものを選んだつもりなのだが特売品だったもので……、と私の言い訳。リゾートクラブの夏休み宿泊予約の抽選が当たった際にも「この日程では行きにくい」と言われた。皆が行きやすい日程を選んで第3希望までエントリーしていたのが第2希望で当選したものだった。私はベストな日程ではなくても当選しただけで幸せだった。落選した方もいたはずだから。
ふと母方の祖母を思い出した。祖父が定年退職した後の頃だったか「本当にあの人は嫌な人よ」などと放言するようになった。祖母は明るく気っ風の良い人だったので、周囲の者は冗談と笑い飛ばしていた。もちろん深刻な発言ではないのだが、私は高校生くらいだったので“じゃあ、何で結婚したんだ”くらいに思って笑っていた。祖父は何を言われてもニコニコしていた。
祖父母はその前後に金婚式を迎えたが、夫婦はそのくらいの期間一緒にいると何でも言える、言ってしまえる。そんなものかもしれない。
加山雄三氏も今年4月11日で88歳になった。最近はテレビ、ラジオの登場も少なくなり、寂しい限りである。歌わなくてもいいから、インタビュー番組でもいいから、テレビなどに出て人生を語って欲しいと思う。「マイワイフ・イズ・アドミラル」この言葉の深さを思う時、これは私のこれからの人生の経典である。
私は加山雄三氏のファンを辞めた。信者になった。
代表
関根健夫( 昭和30年生 )